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執筆者の写真hachimankyoukai

トランクの中の日本ジョー・オダネル写真展



「焼き場に立つ少年」の写真を見て以来、どうしても見ておかなくてはならないと思ったのです。

 ジョー・オダネル氏は、1945年9月占領軍の従軍カメラマンとして長崎県佐世保に上陸しました。被爆後の長崎の惨状を目の当たりにして、軍では禁止されている私用カメラでネガ30枚に及ぶ写真を撮影します。隠してアメリカに持ち帰りますが、彼が67才になる1970年まで、そのネガをしまいこんだトランクは屋根裏に置かれ、開けられることはありませんでした。

 最新兵器としか聞かされていなかった原爆が一瞬ですべてを破壊し、焼けただれた人間の体や、孤児となった子どもたちなど悲惨な現実を見た彼は、悪夢に悩まされ、当時のことは忘れたいと思ってその後の人生を生きてきました。

 1969年のある日、訪れた修道院で十字架の前に置かれた被爆者の写真を見て、封印していたトランクを開け、ネガを現像し全米各地や日本で写真展を開催し、85才で亡くなるまで核兵器廃止を訴え続けたということです。

「原爆投下によって戦争が終結した」という認識のアメリカ社会では、退役軍人などから妨害もされたということですが「歴史は繰り返すというが、決して繰り返してはならない」というオダネル氏の信念は揺るがなかったのです。

 彼自身も、被災地に長くとどまったため、皮膚癌をわずらい、奇しくも長崎に原爆が投下された8月9日に亡くなりました。

 彼の遺志は、いま息子タイグ氏に受け継がれています。

 八日市図書館のギャラリーでは、「焼き場に立つ少年」の他に約30点を見ることができます。

 その被写体の多くは、なんの罪もない子どもたちです。涙があふれてとまりません。

 焼け野原となった街のあちこちで、壁だけが建っている教会の写真も印象的でした。

 戦後70年の節目を迎えたこの国で、いま起こっていることを見きわめるためにも、ひとりでも多くの人に足を運んでもらいたいと思います。



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